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FIP(猫伝染性腹膜炎)の治療について2025 10/14

この記事の目的

猫にとって命に関わる病気のひとつであるFIP(猫伝染性腹膜炎)。近年は治療の選択肢が増え、以前よりも「助かる病気」へと変わりつつあります。
本記事では、当院(武蔵小金井ハル犬猫病院)で実施しているモルヌピラビルを用いたFIP治療について、分かりやすく解説します。


猫の体調変化に不安を感じている飼い主さま、FIPと診断された際の治療方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

FIPとはどんな病気?

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスの突然変異によって発症する全身性の炎症性疾患です。本来、猫コロナウイルスは多くの猫が無症状で保有していますが、免疫バランスが崩れたときに一部の猫でFIPへと変化すると考えられています。

 

FIPには「ウェットタイプ(滲出型)」と「ドライタイプ(非滲出型)」があり、次のような症状が見られます。
・ウェットタイプ:お腹や胸に液体がたまり、呼吸が苦しそうになる
・ドライタイプ:発熱、食欲不振、黄疸、神経症状などが見られる
・体重減少や元気消失、目の炎症(ぶどう膜炎)などが出現するケースもある

早期の発見と治療開始が、予後を左右する大切なポイントです。

 

 

治療方法

FIPには、近年さまざまな薬剤による治療が試みられていますが、当院ではFIPの治療にモルヌピラビル(ラゲブリオ)のみを使用しています。

 

この薬はもともとヒトの新型コロナウイルス感染症治療薬として承認されているもので、猫への使用は適用外使用ですが、比較的安定的に入手することのできる国内薬品であり、FIP治療において有望な結果が報告されています。

● 治療成績
国内外のFIP専門病院では、約8割の猫が治癒し、そのうち1割前後で再発が報告されています。
死亡率は1〜2割程度とされ、治療開始の早さが鍵となります。

 

● 投薬方法
当院ではモルヌピラビルはシロップに溶かして処方しております。1日2回・84日間の継続投与が基本です。
自宅での経口投薬が中心ですが、初期の食欲低下や服薬困難な猫には入院によるサポート治療や、栄養カテーテル(食道チューブや経鼻カテーテルなど)を使用した投薬も可能です。

 

● 副作用と注意点
副作用としては脱毛、肝酵素上昇、骨髄抑制などが知られていますが、多くは対症療法や減薬で改善します。

 

● 治療費用の目安(2025年10月時点。薬価の変動などにより事前予告なく変更されることがあります。)
3kgの猫の場合、
低用量:約14万円程度
高用量:約28万円程度
が目安です。

 

状態の悪いケースで治療を進める際には別途、初診検査費(7〜8万円)、定期検査(1回2.5万円前後)が必要になることがありますが、検査内容などについては、体調や費用面も踏まえてご相談させていただきます。

 

 

FIP治療の希望と当院のサポート体制

かつて「不治の病」と言われたFIPですが、現在では治療によって多くの猫が回復しています。
モルヌピラビルは比較的新しい薬剤ですが、これまでの症例からも有効性が確認されており、当院では安全性と効果を両立した治療を行えるよう取り組んでいます。

 

猫の体調に少しでも異変を感じたら、早めの受診が大切です。FIPの疑いがある場合、初期対応から治療・経過観察まで、獣医師が丁寧にサポートいたします。

 

文責:獣医師 鬼木

 

武蔵小金井ハル犬猫病院
小金井・府中・小平・国分寺エリアの年中無休・夜間救急対応病院(24時まで)

 

当院では、モルヌピラビルを用いたFIP治療を実施しています。FIPの診断や治療でお困りの際は、いつでもご相談ください。

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