よくある症状について

動物たちは言葉を話せない分、飼い主様が異変に気付いた時には既に重症化してしまっている、ということも少なくありません。
ここではよくある症状について解説します。

よくある症状について

動物たちは言葉を話せない分、
飼い主様が異変に気付いた時には既に
重症化してしまっている、ということも少なくありません。
ここではよくある症状について解説します。

症状から考えられる原因と治療

1. 皮膚の表面を激しく掻いたり、発疹ができている

皮膚のトラブルで動物病院に来院される理由でいちばん多いのは、細菌性の皮膚炎やアレルギーです。
細菌性の皮膚炎は膿皮症(のうひしょう)と呼ばれ、かゆみや脱毛、皮膚にブツブツができることで感染が発覚します。治療は主に抗生物質の投与を行いますが、抗菌シャンプーも効果的です。
アレルギーは人間と同じで、原因となる物質(アレルゲン)は多岐にわたります。血液検査でアレルギー物質をある程度特定できるので、飼育状況によっては検査を行います。治療は、アレルギー物質に接触しないようフードの種類を変えたり、かゆみがひどい場合はステロイド剤や免疫抑制剤、インターフェロンなどのお薬を症状に応じて使用します。

2. 嘔吐や下痢をしている

嘔吐や下痢の原因は多岐にわたります。
拾い食いや、悪くなったものを食べた場合には、急激な吐き気や下痢が出やすいですし、胃腸や肝臓、膵臓、腎臓といった内臓関係に病気がある可能性も考えられます。
特にお腹が異常に張っていたり、嘔吐が止まらない時、明らかにグッタリしている時は、緊急対応が必要な可能性があります。
すみやかに精密検査を行って原因を特定し、治療(消化管穿孔・腹膜炎などでは緊急手術)を行う必要があります。

3. けいれんやひきつけを起こしている

全身をけいれんさせている、口がガクガクしている、泡を吹いている、といったけいれん発作の症状が出ている場合には、脳の病気のほか、内臓関係(特に肝臓や腎臓)の病気の可能性も考えられます。
けいれん発作は意識をなくしてしまうものから、体の一部にだけ症状が出るものまで様々ですが、激しい痙攣が頻繁に起こる場合は、原因の特定と的確な治療が直ちに必要になります。通常は血液検査・レントゲン・超音波検査などで原因の探索を行いますが、必要に応じて脳MRI検査を行うこともあります。
治療は、原因が見つかった場合(脳炎など)にはその治療を中心に行います。また、見つからなかった場合(特発性けいれんなど)には、抗けいれん薬の使用により、発作の制御を行っていきます。

4. 足をひきずる、階段の上り下りができない

足をひきずったり、動きたがらない場合には脊髄(背骨の中の神経)を痛めている可能性があります。痛める原因は、椎間板ヘルニア、脊髄梗塞、脊髄腫瘍などさまざまです。
通常は血液検査やレントゲンである程度病気の想定ができますが、正確な診断にはMRI検査が必要となることが多いです。
最も一般的な原因は腰に起きる椎間板ヘルニアです。ダックスフントが椎間板ヘルニアを起こしやすいことは有名ですが、他の小型犬や大型犬でも発生することのある病気です。猫ではそれほど多くない病気です。
椎間板ヘルニアの症状としては、抱っこすると痛がる、足をひきずる、動きたがらない、などがありますが、重度の椎間板ヘルニアでは脊髄軟化症(せきずいなんかしょう)という神経の壊死が起きて、死に至ることもあります。
椎間板ヘルニアの治療は、症状の程度により異なりますが、お薬の投与とケージレスト(安静にすること)を行います。重症なケース(特に麻痺の徴候が出ている時)では手術を行うこともあります。

5. 食欲がない

食欲不振の原因原因は、非常に多岐にわたります。
大型犬は一般的に非常に食欲旺盛ですが、急に食べなくなった場合には病的な原因があると考えてよいでしょう。小型犬でも、もともと食欲旺盛な場合は同様です。
普段から食の細い動物では、1、2回あまり食べなかったとしても問題にならないことが多いですが、2日も3日も食べない、という場合は病的な原因を考える必要があります。

6. 熱がある

発熱の原因も非常に多岐にわたりますが、動物で多い原因としては「感染」「免疫病」などがあげられます。一般的に動物の体温は38度前後です。
自宅で安静にしていても39度を超えるような場合は、病的な高熱ですのでなんらかの病気の可能性があります。逆に37度台前半の場合は低体温症の可能性があり、非常に弱っている状態なのかもしれません。
全身の検査により原因の特定を行って治療を進めていきますが、軽症の場合は対症療法として点滴や抗生剤の投与を行って治療反応をみていく場合もあります。

7. おしっこが出ない、頻尿、血尿

尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱にたまります。たまった尿は尿道を通って外に排泄されていきます。これらの通り道のどこかに問題があると血尿が出ることがあります。また、膀胱や尿道のトラブルでは頻尿を伴います。
よくみられるトラブルの原因は炎症で、そのほかにも尿結石、腫瘍などがみつかることもあります。腫瘍などが見つかることは少ないですが、見落としがないよう、尿検査・レントゲン検査・エコー検査などを行います。

8. 身体の表面にしこりがある

犬や猫では、体の表面にしこりができることがしばしばあります。見たり触ったりしただけではその原因はわかりませんが、炎症、腫瘍、のう胞などが疑われます。しこりができた時には、その成分を顕微鏡で確認する細胞診(さいぼうしん)を行うことで、ある程度原因を特定できます。細胞診には麻酔などは通常必要なく、20-30分で結果・治療方針などをお話しすることができます。しこりを発見した場合には、ご相談ください。

9. 目が赤い

眼の大きな種類(シーズーやチンチラなど)では、目のトラブルも非常に多いです。
特に「目が赤い」という状態は、単なる結膜炎でも、角膜の傷でも、緑内障でも、前部ブドウ膜炎でも見られます。これらの中には失明してしまう可能性のあるものも含まれます。
目が赤いから単なる結膜炎と決めつけずに、背景に別の異常が同時に起きていないかを早い段階で確認する必要があります。

10. 足をかばって歩く

遊んだあとから足をかばうようになったり、年をとってから足をかばって歩くようになることはよくあります。
これらの原因は「ねんざ」であったり「加齢性の関節炎」であることは多いです。
しかし、全ての場合がそういうわけではなく、同時に別の異常が隠れていることも多いです。
例えば股関節形成不全の犬が、年をとって足をかばうようになるのは「加齢による股関節変形の進行」ではなく、「膝の前十字靭帯の損傷」であることの方が多いです。また、「ねんざ」に対するお薬があまり効かないのは、「重度のねんざ」だからではなく、「免疫介在性関節炎やリウマチの発症」であることもしばしばあります。
これらを見分けるためには、触診やレントゲン撮影を行い、必要に応じて関節液の検査を行います。

11. 口が臭い

口臭がひどい場合、その原因は口の中にある場合と内臓にある場合が考えられます。犬猫で一般的によくみられる原因は、口の中の歯石や歯肉炎です。特に歯石は程度の差はありますが、ほとんどの犬猫の歯に付着しています。
その正体は、歯垢にカルシウムなどが結合してできた細菌の塊です。歯石は進行すると、歯ぐきに炎症を起こして痛みを生じたり、歯の根っこの部分に膿をつくったりします。歯ブラシなどによって歯石の付着を阻止することは可能ですが、歯周ポケット(歯と歯ぐきのすきま)に存在する歯石は超音波スケーラーで砕かないと除去できません。
動物病院では歯周ポケット内の歯石も除去するために、全身麻酔下で歯石の除去を行います。

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獣医師
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